以前、「知識や時間がなくても大丈夫! 相続税に強い税理士が見つかる4つのステップ」で相続税に強い税理士を探す方法をご紹介しました。
ある読者の方からは、この方法を活用して「良い税理士さんが見つかった!」というご報告もいただいています。
「税理士探しにたくさん時間をかけたい」という人はいないと思いますので、こうしてお役に立てたことが本当に嬉しいです。
しかし一方で、「相続税の申告期限が迫っているので、もっと時間をかけずに税理士探しをする方法はないの?」というお声もいただきました。
結論から言えば、その方法はあります。
しかも、「たったひとつの質問で相続税に強い税理士かどうか見極める方法」があるのです。
ただ、たとえ税理士さんを探せても、あなたに相続税の知識がまったく無ければ税理士さんやご家族と節税対策や相続対策の話し合いをスムーズに進めていけない場合もありますので、時間の取れる方は相続税の基礎知識を付けた上で税理士探しをしていただくことをおすすめします。
そのための方法については、「知識や時間がなくても大丈夫! 相続税に強い税理士が見つかる4つのステップ」を参考にしてください。
もくじ
究極の質問「書面添付制度を使ってくれますか?」
結論から言えば、これが究極の質問です。
この質問に対して税理士さんから、
はい、ウチは書面添付制度を標準で付けてますよ。
という答えが帰ってきたらベストアンサーです。
もしくは、HPに記載されていれば聞くまでもありません。
では、なぜこのたったひとつの質問だけで相続税に強い税理士さんかどうかが分かるのでしょうか?
相続税の申告・納税でもっとも避けたいこととは?
私たちが相続税を申告・納付するにあたり、一番嫌なことはなんでしょうか?
「税金を払うことが何よりも嫌だ!」という人も多いかもしれませんが、これは法律で定められていることなので不満があっても納得するしかありません。
また、相続税を節税する方法はたくさんありますが、基本的には数年単位の時間をかけて行っていく方法がほとんどなので、いざ申告・納付というタイミングでできる節税対策はほとんどありません。
そうなると一番避けたいのが「余計な時間を取られること」になってきます。
中でも一番避けたいのが、「税務調査」です。
相続税の申告・納付は心身ともにぐったりする……
相続税の申告・納付というのは想像以上に大変な作業です。
遺産分割協議は大抵の場合すんなり進みませんし、書類を揃えるために金融機関や役所へ何度も行くのも大変です。
税理士も探さないといけないですし、報酬だって支払わなければいけません。不動産がある場合は司法書士への報酬も必要です。
また、故人が保有していた資産はすべて遺産になるので、銀行口座や証券口座、ゴルフの会員権や骨董品など、漏れがないようにすべてチェックしなくてはいけません。
やっと相続税の申告・納付を終えた頃には心身ともにぐったり……
達成感よりも「これでやっと解放されるのか……」という気持ちになる人がほとんどです。
それから1年ほど経ったある日、とつぜん税務調査の連絡がくるのです。
税務調査は悲劇でしかない
税務調査というのは、たいてい申告・納付をしてから1年後くらいにやってきます。
1年も経てば当時の記憶も薄れつつあるタイミングです。
「早く解放されたい」と思っていたくらいですから、積極的に忘れている人もいるでしょう。
そんなときに税務調査に入られるストレスは想像以上です。
しかも税務調査はほぼ丸一日がかりで、追加調査が必要と判断されればさらに時間が取られてしまいます。
さらにそこで隠し財産なんかが見つかってしまったら大変です。
※よくあるのはタンス預金や家族の誰も知らなかったヘソクリ口座などです。
これが発覚すると追徴課税が課されてしまうのですが、その課税率はなんと最大35%です。
※悪意のない過少申告や無申告は10%〜15%で済みますが、それでも小さな金額とは言えません。
ちなみに国税庁が公開しているデータによると、税務調査に入られた場合の追徴課税される確率は驚きの82%です。
「税務署は申告漏れがあると断定した上で税務調査に来ている」と思っておいた方がいいでしょう。
そして実は、相続税申告の約4件に1件(約25%)という高確率で税務調査が入っているのです。
いかがでしょうか? これを何とか避けたいとは思いませんか?
実は(100%というわけではないですが)その方法があるのです。
それが先ほどの究極の質問でご紹介した「書面添付制度」といわれるものです。
書面添付制度ってなに? どんなメリットがあるの?
「書面添付制度」というものが、どう税務調査の回避と関係しているのでしょうか?
書面添付制度を簡単に説明すると、税理士が相続税申告をする際に、税務署に申告書類と一緒に書面を提出できる制度のことです。
では、その書面にはどんな意味があるのでしょうか?
それは、
「この相続税の申告書は担当税理士である◯◯が”責任を持って”あらゆる調査をして作成しました。だから税務調査は必要ないですよ」
という意味合いのものなのです。
そして、この制度を活用した場合のメリットは3つもあります。
- 税務調査の確率がグンと(約17人に1人(6%)まで)下がる
- 税務調査の対象になりそうでも、まずは税理士だけが税務署から呼び出される
- 2の段階で申告書に誤りがあった場合でもペナルティが課されない
税務調査の確率は25%→6%と大幅ダウンですし、例え税務調査の対象になりそうでも”ひとまずは”税理士さんだけが呼ばれて対応してくれます。
そこで疑問が解消されれば税務調査は省略されるので、あなたは時間を取られずに済みます。
さらに、万が一申告書に誤りがあることが発覚しても、追徴課税されないのです。
※ただし、延滞税はかかります。また、意図的に申告してなかった場合は無申告加算税が5%かかります。
「添付制度ってそんな良い制度なのか! じゃあ、どの税理士さんも使ってくれるんじゃないの?」
と思われたかもしれませんが、実はそうではないのです。
実は書面添付制度は税理士さんが「できれば使いたくない理由」があるのです。
税理士の本音は「書面添付制度」を使いたくない?
実のところ、書面添付制度を積極的に活用してくれる税理士さんの方が圧倒的に少ないのが現実です。
こんなにメリットのある制度なのになぜでしょうか?
その理由は大きく分けて2つあると言われています。
ひとつは「平成13年に税理士法改正で使いやすく拡充された比較的新しい制度だから」です。
※書面添付制度自体は元々ありましたが、「改正によって使う価値が高まった」という経緯があります。
書面添付制度は必須ではありませんので、多くの税理士さんは「必須ではないし、今まで通り申告しているだけ」ということです。
また、もうひとつの理由ですが、これが「税理士が書面添付制度を積極的に利用したくない最大の理由」だとも言われています。
それは、「書面に虚偽の記載をした場合には、税理士が懲戒処分の対象となってしまうため」です。
つまり、私たち納税者側にとっては「最強の盾」となるこの制度も、税理士さんからすると「リスクはあってもメリットは少ない制度」なのです。
もし、あなたが税理士だったら書面添付制度を活用しますか?
例えばあなたが相続税専門の税理士になったとします。
ある日、事務所に見ず知らずの人から電話があり、「相続税申告をお願いしたいのですが……」と相談されました。
後日、事務所でご遺族から話を伺います。
遺産は現金や預金、いくつかの不動産、株やゴルフの会員権、生命保険などがあるそうです。
「遺産はそれですべてでしょうか?」と聞くと、「えぇ……たぶんそうだと思います」という答え。
実はご遺族が故人のすべての財産を把握できていない場合も多いのです。
また、中には「税金を払いたくない」という理由で、ご遺族があなたに嘘をついて財産を隠そうとしている場合もあります。
まだすべてを把握しきれていない状況で、その日初めて会ったその人(家族)に対して「自分の懲戒処分のリスク」を負わなければいけないのです。
あなたなら、自信を持って決断できそうでしょうか?
この決断は心意気だけではできません。自分の税理士としての立場が危うくなるかもしれないことを、心意気だけで決められるはずがないのです。
では、なぜ一部の税理士さんは書面添付制度を”すすんで使う”ということができるのでしょうか?
書面添付制度は「リスク」か「サービス向上」か
それはその税理士さんに、十分な「知識」と「経験」があるからです。
相続税申告で書面添付制度を積極的に活用しようとする税理士さんは、いわゆる「資産税(相続税・贈与税・譲渡所得に係る所得税など)」に対する深い知識と経験を持ち合わせている傾向にあります。
そんな税理士さんであれば、預金通帳のお金の流れをひと通りチェックすれば隠し財産がないかどうかある程度検討をつけることもできるため、書面添付制度を使うことが「リスク」ではなく、お客さんへの「サービス向上」の手段として使えるというわけです。
「税理士」と一言で言っても、すべての税理士が資産税を得意としているわけではありません。
世の中の多くの税理士さんは企業や個人の会計業務をサポートする仕事をしているため、相続税などの資産税については知識や経験が少ない人がほとんどなのです。
※逆に資産税の専門家は企業や個人の会計業務の知識や経験が少ない傾向にあります。
そういう税理士さんが不慣れな相続税申告を行う場合、書面添付制度は「リスク」になります。だから活用したがらないというわけです。
「書面添付制度」は、まさに芋づる式の「つる」!?
「芋づる式」とは、サツマイモなどの芋の「つる」をたぐると、芋が連なって出てくるさまの喩えです。
実は相続税申告の税理士選びにおいて、この書面添付制度こそ、芋づる式の「つる」なのです。
それはどういうことでしょうか?
以前、「「この税理士は相続税を極めている」と分かる達人税理士の7つの特徴」で紹介した7つのポイントが以下です。
- 事務所または税理士が相続税に特化している
- 費用(報酬)が明確で、”安すぎない”
- 最後まで税理士が責任を持って担当してくれる
- 節税を考えた遺産分割の提案を積極的にしてくれる
- 預金通帳などを見て申告漏れがなさそうかチェックしてくれる
- 不動産の現地調査を”すすんで”してくれる
- 税務調査対策にもなる「書面添付制度」を”すすんで”提案してくれる
書面添付制度を使うくらいなので、きっと相続税に特化した税理士または事務所でしょう。節税を考えた上での提案もしてくれるはずです。
また、申告漏れのないようにするためには預金通帳のチェックや不動産の現地調査という手間がかかってきますので、費用(報酬)は安すぎるということはあり得ません。
さらに書面に虚偽の記載をしたら懲戒処分になってしまう可能性もあるため、自然と最後まで税理士が担当するケースが多くなります。
それだけ書面添付制度は税理士さんが責任を伴う制度だということです。
もしあなたが「相続税申告・納付をぬかりなく終えたい」と考えているのであれば、ぜひ書面添付制度をすすんで活用してくれる税理士さんを探しましょう。
こういう税理士さんと出会っておくと、二次相続の際などもスムーズに依頼することができるので安心です。
インターネットで地域の税理士事務所を検索するのもいいですし、無料で税理士を紹介してくれるサービスも活用しましょう。
税理士ドットコム(東証マザーズ上場企業「弁護士ドットコム」が運営しているサービス)
税理士紹介エージェント(面談&審査を通過した税理士だけが登録されているサービス)
問い合わせの際に、「書面添付制度に対応してくれる税理士さんを希望します」と添えておけばOKです。
また、「問い合わせの時に何を書いたらいいのか分からない!」という方は「そのまま使える! 税理士ドットコムなどで相続税の税理士紹介を依頼する時の例文(雛形)」を参考にしてください。
良い税理士さんを、はやく見つける大切さ
相続税の申告・納税は、想像以上にやることがたくさんあります。
また、申告・納税期限も10ヶ月と定められているため、気づけばあっという間に時間がなくなってしまいます。
そこで円滑に手続きを進めていくためにも、相続税に知識や経験が豊富な税理士さんを見つけられるかどうかはとても重要です。
知識や経験が乏しい税理士さんだと、スムーズにリードしてもらえなかったり、申告後に「もっと節税できる遺産分割の方法があることが分かった」というケースも珍しくありません。
本当であれば相続税のことなど気にせずに、故人を偲ぶ時間をたくさん持ちたいと考える人も多いでしょう。
もしくは前に進むために時間を使いたいという人も多いでしょう。
だからこそ相続税の税理士選びは「できるだけ早く良い税理士さんを見つけること」が大切なのです。
少しでも時間が取れるという方は、本記事だけでなく、「知識や時間がなくても大丈夫! 相続税に強い税理士が見つかる4つのステップ」を参考にして、あなたに最適な税理士さんを見つけていただければと思います。
本日も「ポジティブ終活」に来てくださってありがとうございました。


相続税申告はお互い大変な作業になるから、依頼者と税理士が協力し合って進めていくことが大切なんじゃ。
そのためには早めに税理士さんと関係を作って、素直に状況や希望を伝えた上でアドバイスしてもらうことが一番じゃよ。
もちろん、「書面添付制度」をすすんで使ってくれる税理士さんにの。
このひとつの質問だけで、すべてが分かるっていうのは目から鱗でした!
でも、税理士さんも結構大変なんですね……
自分が管理してない他人の資産に対して責任を持たないといけないなんて。
でも、依頼する僕らが誠実に情報提供できていればスムーズに進められるってことですもんね!