「面と向かって親と話し合う」
終活の話に限らず、親と大事な話をするというのは意外と難しいものです。
また、話ができたとしても「子供の意見を聞き入れてもらう」となると、さらにハードルは上がります。
なぜなら親には親の威厳やプライドがあり、「子供から言われたくない」という想いがどこかにあるからです。
とくに男同士だと、どうしてもこんな会話になりがちです。
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子供:「親父とおふくろが死んじゃったらこの家をどうするかとか考えておきたいから固定資産税のこととか教えてくんない? 相続税? がかかるかどうかとかも知っておきたいし」
父親:「相続税? たまに帰ってきたと思ったら何だ急に。そんな話はお前にしても分からんだろ。税理士でもあるまいし。お父さんが何とかするから気にするな」
子供:「(その時に何とかしないといけないのはこっちなんですけど……)いや、気にするなって言っても事前にちゃんといろいろ決めてなかったら大変って聞くよ? 兄弟でモメるのも嫌だから、できる限りの準備はしときたいんだよ」
父親:「そんなこと言ったってお前はこっちで就職せずに東京へ出てしまったじゃないか! 何かあったら◯◯(次男)に世話になるから良い」
子供:「(こっちだってそんな先のことまで考えられなかったんだからしょうがないだろ……)いや、◯◯(次男)だってどう考えてるか分かんないだろ? ちゃんと聞いたことあんの?」
父親:「それはまた話しとくからいい! お前はもういらん心配をするな」
子供:「(何だよ、せっかく気を利かしてやってんのに……)はいはい、そうですか。分かりました」
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これと同じとまではいかなくても、似たような状況がイメージできた方も多いのではないでしょうか。
家族だからこそ「話さなくても分かり合えている」と思っていたのに、実は「分かり合うことがこんなにも難しい」と、気づかされる瞬間でもあります。
「伝えているのに、伝わらない」
実は考えや想いというものは、いくら強く持っていても自分以外の人に伝わらなければ物事は上手く進みません。
たとえば街で女性に一目惚れしたからと言って、いきなりその人に「好きです」と伝えたら、どうなるのかは想像がつきますよね。
一目惚れしたならしたで、あなたの想いをその人に上手く伝える「伝え方」があるはずです。
その時に大切なのは「相手の立場になって考える」ということ。
「こんな会話だったら自然かな?」「こんな風に声をかけられたら嫌だろうな」などと、相手の気持ちを考えながら言葉やタイミングを選ぶ。
もしそれが上手くいけば、そこからやっと自分の素直な気持ちを伝えるチャンスが回ってきます。
ちなみに今回のシチュエーションは「話を聞く姿勢になってくれない親に自分の気持ちや考えを伝えたい」です。
そんな人におすすめしたいのがタイトルにも書いた「手紙」です。
手紙、書いてますか?
親御さんに対して手書きの手紙を書いたのはいつでしょうか?
年賀状のような形式的なものではなく、「自分の想いを綴った手紙」です。
「記憶にない」という人もいるかもしれませんね。
また、「この時代に手紙なんて古いよ」と思われるかもしれません。
たしかに今は本当に便利な時代になりました。
遠く離れていても、電話をすれば声を聞けますし、テレビ電話なら顔を見ながら話すこともできます。
メールならすぐにメッセージを送れますし、LINEならメッセージだけでなくスタンプなんかも送れますね。
日々、便利でコミュニケーションが取りやすくなっているはずなのに、肝心の「真面目な話」でそれらが有効かというとそうでもないのです。
なぜならどれも「双方向」のコミュニケーションだからです。
結局は冒頭の会話と同じような展開になってしまいやすいんですね。
だからこそ、「親の気持ち」を考えることが大切になってきます。
まず大前提として、親は無条件に私たち子供のことを愛してくれています。
そして、いつだって「子供に心配をかけたくない」と思ってくれています。
「いつでも子供の一番の理解者でありたい」と思ってくれていて、「子供に尊敬されるような親でありたい」と思っくれているでしょう。
それが親心というものです。
ところが、双方向のコミュニケーションにおいて、親のその強い気持ちが会話の邪魔をしてしまうこともあるのです。
だからこそ、あえて「手紙」という一方通行のコミュニケーションを用いることにより、あなたの想いが親御さんに伝わる可能性が高まります。
また、手紙はできるだけ手書きをオススメします。
「早いしカンタンだから」という理由でパソコンで打ってしまいがちですが、本当に想いを伝えたいのであれば手書きに勝るものはありません。
なぜなら人は本質的に努力や苦労が感じ取れるものに対して「ありがたみ」を感じるからです。
そして、人はその努力や苦労がいかに大変なことかを知っています。
スーパーで売られている野菜でも、野菜だけ置いているよりも、「私が作りました」と生産者の顔写真が貼られていると「ありがたみ」が増すのと同じことですね。
そしてその「ありがたみを感じられるもの」を手にしたとき、言葉にはできない幸福感を得ることができるのが私たち人間です。
子供が自分のためだけに書いてくれた手書きの手紙。
それは親御さんにとって「かけがえのないもの」となるでしょう。
「あぁ、こんな事を考えて言ってくれてたのか」
「もう立派な大人になったんだなぁ」
「いつの間にか親として子供にしてあげられることも変わってきたんだなぁ」
きっとあなたの想いを肌で感じながら、言葉をひとつひとつ丁寧に理解しようとしてくれるはずです。
ある人は手紙を送ったことを機に、親との文通がスタートし、数年経った今も続けているそうです。
定期的に顔を合わせてはいるものの、面と向かっては恥ずかしくて言えない感謝の言葉や想いを手紙に綴って伝え合っているんだそうです。
だからと言って顔を合わせた時は昔と変わらずいつも通りの親子のまんま。
それでも「心が通い合っている」という感覚が常にあるのだそうです。
素敵な親子のコミュニケーションですね。
手間をかけなくても文字を送れる時代になったからこそ、手間をかけたものの価値が高まっています。
いかがでしょう。
あなたも手紙、書いてみませんか?
本日も「ポジティブ終活」に来てくださってありがとうございました。