

最初は「法律の話なんて難しいからイヤだ!」と思ってたんですが、意外とカンタンで僕でもすぐに理解することができました。

では、今回から少しずつ「相続税」の話に入って行こうかの〜。
実は遺産がたくさんあると、相続税という税金を収めないといけないんじゃよ。


とは言っても課税対象者はかなり少ないがの〜。
2015年のデータで見ると、被相続人(亡くなった人)のうち8%、つまり12人に1人くらいしかいないんじゃ。
多くの人にとっては無縁な税金と言ってもいいじゃろう。
それにもし今保有している資産の総額が課税対象になっているとしても、今回の基礎控除額を知った上できちんと対策しておけば、人によっては非課税者になることもできるんじゃよ。

そんなお得な話があるなら早く教えてくださいよ〜!

節税方法の前に、まずは自分(もしくは親)が課税対象者になるだけの資産を持っているかどうか知っておく必要があるんじゃ。
そしてそれを知るために必要なのが、今回のメインテーマである「基礎控除額を計算する」ということなんじゃよ。
それでは順を追って説明していこうかの。
実は国税と地方税を合わせると、約50種類もの税金があります。
そして、その内のひとつが「相続税」です。
ただし相続税は、消費税のように全員が一律で納める税金ではなく、一定の条件に当てはまる人だけが納める税金となっています。
その「一定の条件に当てはまるかどうか」が、この基礎控除額によって左右されるのです。
そこで今回は相続税の基礎控除額の計算方法について解説したいと思います。
相続税の基礎控除額とは?
そもそも、「基礎控除額」とはなんでしょうか?
「控除」の意味は「差し引くこと」です。
つまり、基礎控除額とは「誰もが基本的に差し引くことができる金額」という意味になります。
所得税でも38万円といった基礎控除額が設けられているため、この言葉の意味をご存じの方も多いかと思います。
もし、遺産総額が基礎控除額以下であれば相続税は非課税、基礎控除額以上であれば相続税の課税対象ということです。


ちなみに非課税の場合は、納税はもちろん、申告すら必要ありません。
※本当は課税対象なのに「非課税だと思って申告しませんでした」という言い逃れは税務署には通用しませんので、必ず申告しましょう。
もし課税対象だった場合は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、税務署へ申告および納付をしなければいけません。
申告だけでなく、納付まで完了しないといけないので、ご注意ください。
10ヶ月というと長いように感じるかもしれませんが、意外とあっという間に過ぎてしまいます。
相続人の人数が多い場合は遺産分割協議にも時間がかかりますし、平日働かれている方や遠方に住まれている方はそれなりの覚悟が必要になってきます。
また、申告および納付をする税務署はあくまでも被相続人(亡くなった人)が住んでいた地域の税務署ですので注意が必要です。
相続人(遺産を相続する人)が住んでいる地域の税務署ではありませんので、間違えないようにしましょう。
そのため、実家が地方にあって都会で働かれている方は相続税の申告手続きはなかなか大変な作業になってきます。
また、「税理士にお金を払うのはもったいないから自分で申告しよう」と考える方もおられます。
たしかに、遺産がすべて現金や預金といった金融資産だけであれば自分でできないこともないですが、税金の知識が必要不可欠なのはもちろん、申告手続きに充てられるだけの十分な時間が必要になってきます。
また、資産に不動産があるだけで手続きが一気に複雑化してしまうので、お金を払ってでも税理士さんにお願いする方が得策な場合がほとんどです。
ただ、どちらにせよお金はかかりますし、手間や時間もかかってきます。
そこで、現時点で保有している資産が基礎控除額よりも少しだけ多いという人は、「生前に基礎控除額以内に遺産総額を減らしておく」という考え方も必要になってくるのです。
そのためにも、まずは「基礎控除額がいくらなのか?」を知っておく必要があるというわけです。

遺産総額が基礎控除額以下だったら相続税も納めなくて良いし、申告もしなくて良いんですね!
相続税の申告手続きって面倒くさそうだし、税理士さんに依頼する費用も結構かかりそうですもんね。
確かにそれを全部しなくて済むなら魅力的ですね〜。
じゃあ、その基礎控除額って一体いくらなんだろう?
基礎控除額と課税遺産総額の計算方法
続いては基礎控除額の計算方法と、その基礎控除額をもとに課税遺産総額を計算する方法を見ていきましょう。
3つのステップに分けて順番に解説していきますので、手元にメモがあればあなたの家族構成をもとに計算してみてください。
STEP1. 法定相続人の人数を把握する
基礎控除額の計算をするためには、まず法定相続人の人数を把握しなくてはいけません。
一番シンプルなのは配偶者(夫や妻)と子どもがいるパターンで、その場合は配偶者と子どもの人数を足し合わせた数字が法定相続人の人数になります。
例えば奥さまと3人のお子さまがいれば、法定相続人は4人(妻1人 + 子ども3人)になります。
この法定相続人の人数さえ分かれば基礎控除額の計算はとても簡単ですので、具体的な計算方法は次のステップでご紹介したいと思います。
また、「誰が法定相続人になるのか分からない」という方は、以下に法定相続人の解説記事がありますので、そちらを参考にしてください。
「あなたが亡くなった場合」と、「あなたの親御さんが亡くなられた場合」の2パターンがありますので、あなたの状況にあった記事をお選びいただければと思います。
※読みやすさの違いだけで、内容に違いはありません。
【あなたが亡くなった場合】
子ども? 孫は? あなたが亡くなった時の法定相続人を知りましょう
【あなたの親御さんが亡くなられた場合】
親が亡くなったら誰が相続人になるの? 法定相続人の優先順位とは
STEP2. 基礎控除額を算出する
さて、法定相続人の人数が分かったら基礎控除額を計算していきましょう。
相続税における基礎控除額は、以下の計算式で求められることになります。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
3,000万円は固定で、法定相続人の人数によって600万円ずつ基礎控除額が増えていく仕組みになっています。
たとえば法定相続人が1人の場合は、
3,000万円 + 600万円 × 1 = 3,600万円
となります。
つまり、基礎控除額の最低ラインは3600万円になるということです。
遺産総額が3600万円以下の場合は、相続税の申告や納付は不要ということですね。
また、法定相続人が2人の場合は、
3,000万円 + 600万円 × 2 = 4,200万円
となり、法定相続人が4人の場合は、
3,000万円 + 600万円 × 4 = 5,400万円
となります。

まずは3000万円が基本で、あとは法定相続人の人数によって600万円ずつ増えていくんですね!
たしかに法定相続人の人数さえ分かれば基礎控除額の計算は僕でもすぐにできるくらいカンタンなんですね〜。
STEP3. 遺産総額から基礎控除額を引いて課税遺産総額を算出する
さて、基礎控除額が分かればあとは遺産の総額から基礎控除額を引けば課税遺産総額が分かります。
もちろんマイナスであれば相続税の納付はもちろん、申告も不要です。
逆にプラスだった場合は相続税の申告が必要になってきます。
ただし、申告が必要だからと言って、必ずしも納税しないといけないわけではありません。

だって基礎控除額を超えたら課税対象になるんでしょ!?
申告はするけど、納税はしないなんてことがあり得るの?
ももも、もしかして……脱税!?
いえいえ、違法なことではありませんので、ご安心ください。
実は基礎控除以外にも、「人によって使える控除制度」というものが存在します。
例えば「配偶者控除」です。
基本的に夫婦は共に助け合って生活をしたり、財産を守っていますよね。
また、パートナーに先立たれてしまった配偶者の老後の保障も必要になってきます。
そういった理由から「配偶者控除」という控除制度が設けられているんですね。
また、配偶者控除は以下のようにとても大きく設定されています。
- 取得した財産額の1億6000万円まで
- 取得した財産額の2分の1(法定相続分)まで
①の条件である1億6000万円は超えてしまっていますが、②の条件が適用されることになります。
配偶者の法定相続分は2分の1の3億円なので、たとえ3億円分の遺産を相続しても配偶者控除で相続税はゼロになるのです。
極端な話ですが、配偶者であれば100億円でも200億円でもゼロにできてしまうのが、配偶者控除の威力です。
そう考えると、これがいかに大きな控除制度かお分かりいただけるかと思います。
ただし、この控除は自動的に適用されるわけではありません。
「配偶者なんだから勝手に控除してくれてるんでしょ〜?」というわけにはいかないんですね。
配偶者控除を受けるには、申告期限までに「申告書の提出をしていること」と「遺産分割協議が終了していること」が条件となっています。
※遺産分割されていない財産も特定の手続きを踏めば税額軽減の対象にできますが、ここでは割愛します。
控除を受けるにはきちんと申請をしなければいけませんので、覚えておきましょう。
この他にも大きな控除制度として、宅地の評価額を80%引き(330㎡まで)にできる「小規模宅地等の特例」がありますが、こちらも申告書の提出と遺産分割協議が終わっていることが条件になってきます。
ただ、このような控除制度を活用することで、「申告はするけど納税はしなくて済んだ」ということが起こり得る訳ですね。
ちなみに相続税の申告も配偶者控除の申請もせずに放ったらかしにしておくと、控除が受けられないどころか、延滞税といった罰金が上乗せされてしまいます。
相続税の申告と納付や各種控除を受けるには、それぞれ期限が設定されているため、早めに税理士さんなどに相談しながら準備を進めておくことが大切です。

一瞬でも脱税だと疑ってしまった自分が情けないです(苦笑)
まずは誰がどんな控除を受けられるのかを把握することが大切なんですね!
2015年(平成27年)の相続税改正で基礎控除額が大幅ダウン
さて、ここまで基礎控除額の計算方法について解説してきましたが、実は2015年の相続税改正で基礎控除額が大きく減額されてしまったことをご存じでしょうか?
先ほどもご紹介した通り、現在(2105年以降)の基礎控除額は以下の通りとなっています。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
ところが、2014年まではこうだったのです。
5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人の数
基礎控除額だけでも2,000万円も違いますし、法定相続分1人あたりの控除額も400万円も差があります。
これにより、相続税の課税対象者は急激に増加しました。
2014年から2015年で見るとなんと約2倍に増えています。
詳しいことは「【12人に1人】2015年に相続税の課税割合が「4.4%→8.0%」と2倍に急増! その原因とは?」で解説していますので、興味のある方はそちらをご覧いただければと思います。
特に東京ではアベノミクスや東京オリンピックの影響などが重なり、不動産価格が上昇傾向にあります。
そのため、課税割合はさらに増えるとの見方も出ています。
だからこそ、
- 財産の総額はどれくらいあるのか?
- 基礎控除額はいくらなのか?
- 相続税の課税対象なのか?
は、できるだけ早めに把握しておきたいところです。
早めに把握ができれば、対策も早めにすることができます。
例えば相続税対策の定番である生前贈与は、被相続人が亡くなった日から過去3年間に贈与された財産は「贈与ではなく相続財産である」とみなされてしまう制度があります。
病気などが発覚してから生前贈与をはじめたとしても、思っていたほどの節税ができない可能性があるのです。
そういった点からも、早めに準備をしておいて損はないでしょう。

税制改正って怖すぎますね……。
でも早めに把握しておけば、できる対策もあるんですね!
節税方法についても詳しく知りたくなってきたな〜。
まとめ
今回は相続税の課税対象者かどうかを左右する「基礎控除額」の計算方法についてご紹介しました。
基礎控除額の計算は法定相続人の人数さえ把握できれば、とても簡単です。
あとは財産の総額さえ分かれば、ご自身(もしくはご家族)が課税対象者かどうかはすぐに分かります。
課税対象であれば早めの相続税対策もできますので、ぜひこの機会に計算してみてください。

これはみんな一度は計算しておいた方が良いですね。
だって、それだけで現状が分かって、場合によってはいろんな節税対策もできるんですよね?

経験した人は分かると思うが、相続税の申告というのは想像以上に骨の折れる作業なんじゃ。
だからこそ課税対象の人は早めの対策をして、家族の負担を減らせるように準備しておくことをオススメしますぞ〜。