なぜ? 相続税に詳しい・強い税理士が意外と少ない3つの理由

ネガ男くん
ポジ仙人。

相続税の申告手続きって税理士さんにお願いするんですよね?

ポジ仙人
そうじゃの〜。

自分で申告できんこともないが、現実的とは言えんからの。

相続財産が現金や預金などの金融資産だけなら良いかもしれんが、1つでも不動産があると手続きが一気にややこしくなってしまうんじゃ。

「素人がそこに時間と労力を費やすくらいなら、プロの税理士に任せた方が賢い選択」という人がほとんどじゃよ。

ネガ男くん
やっぱりそうですよね。

実は親と「今の内から税理士さんに相続税対策のことを相談しておこうか」って話になったんです。

でも、「どうやって税理士さんを探せば良いんだろう?」と思いまして。

とりあえず親の知り合いの税理士さんがいるらしいので、「その人に聞いてみようか」っていう話になってるんです。

ポジ仙人はどう思います?

ポジ仙人
そうか、そうか。

相続税対は始める時期が早ければ早いほど効果を発揮するものじゃから、それは良いことじゃの〜。

ただ、ひとつ大切なことをアドバイスしておこうかの。

それは「税理士だからといって全員が相続税にも詳しいとは限らない」ということじゃ。

ネガ男くん
え!? そうなんですか?

てっきり税理士さんはみんな相続税について熟知してるもんだと思ってたのに……。

ポジ仙人
ホッホッホッ。

実はそんなことはないんじゃよ。

「相続税のことを聞かれても困ってしまう」という税理士さんも意外と多いんじゃ。

では今回は、ネガ男くんのためにも「相続税に詳しい・強い税理士が少ない3つの理由」を解説していこうかの〜。

「税理士は税金のプロ」

実はこのイメージが、「税理士なら相続税について詳しいんだろう」という誤解を生んでしまう原因のひとつとなっています。

ところが実際は「相続税について詳しくない税理士さん」もたくさんいるのです。

ただ、これは「勉強不足の税理士はけしらかん」という話ではなく、単に得手不得手の問題です。

例えば「お医者さん」であっても内科の先生が外科手術はできませんよね?

要は、それと一緒です。

この事を知らずに、

  • 税理士なら誰に任せても大丈夫だろう
  • 知り合いの税理士に任せれば安心だろう
  • 評判が良いみたいだから大丈夫だろう

といった理由で税理士選びを進めてしまうと、後々に大きな後悔をしてしまう危険性もあるのです。

申告手続きがスムーズに進まないくらいであればまだ良い方でしょう。

例えば節税アドバイスをほとんどしてもらえないこともありますので、「よく分からないまま申告手続きを任せたら、本当は節税できていたはずの数百万円を税金で払っていたことが分かった」なんてことも珍しくありません。

もちろん気づいた時には「時すでに遅し」です。支払った税金は二度と戻ってきません。

また、最悪の場合は後々に申告漏れが見つかり、追徴課税を言い渡されてしまい、数百万円〜数千万円ものお金を払わなければならなくなってしまった人もたくさんいます。

申告書を提出していた場合の追徴課税は「重加算税」というものが課せられてしまい、その税率はなんと35%にもなるため、人によってはとてもつない額になってしまうのです。
申告書の提出すらしていなかった場合の課税率はなんと40%にもなります。

ちなみに国税庁がこんなデータを発表しています。

2014年に亡くなった人を中心とした相続税申告のうち、追徴課税の1件あたりの平均額は591万円だったそうです。
出典:国税庁 | 平成28事務年度における相続税の調査の状況についてより

大切な家族を亡くし、その悲しみを乗り越えて、やっとの思いで相続税の申告手続きと納付が終わったと思ったら、そんな金額の課税をされてしまうなんてひとたまりもありません。

ただ、これは税理士さんだけが悪いという話ではありません。

なにも税理士さんは「追徴課税されたい」と思っている訳ではありませんし、「節税させたくない」と思っている訳でもないからです。こういった問題が起こる原因はちゃんとあるのです。

それは、「相続税で後々トラブルが起きないよう、先を見据えてリードできるだけの知識と経験を持った人(税理士もしくは依頼人)がいない」という事です。
もちろん優秀な税理士だったとしても、遺族が税理士のアドバイスを無視して悪意を持って脱税をしたときは、防ぎようがない場合もあります。

そこで今回は、「なぜ相続税に詳しい・強い税理士が少ないのか?」が分かる3つの理由をご紹介したいと思います。

また、今後何回かに分けて、「相続税申告の税理士の選び方」についてもご紹介いたします。

これらを知れば、きっとあなたの相続税対策に対する考え方が変わり、「自分がやるべきこと」も自然と見えてくるでしょう。

理由1. 実はすすんでやりたくない相続税の申告手続き

相続税の申告手続きをしてくれる税理士さんをお探しの方にはショックかもしれませんが、実は相続税の申告手続きは税理士が「すすんでやりたくない仕事」のひとつです。

もちろん積極的にやっている税理士さんもいますが、それはあくまでも少数派。

また、「本当はやりたい」と思っていても、「やれない理由」があるのです。

あなたが経営者なら選ぶのはどっちのビジネス?

その答えは税理士さんの立場になって考えると簡単に分かります。それがよく分かる質問がありますので、あなたも答えてみてください。

題して、「もし、あなたが経営者なら選ぶのはどっち?」です。

もし、あなたが経営者なら選ぶのはどっち?

あなたはこの度、起業をすることになりました。

一世一代の大勝負。もちろん失敗はしたくありません。

さて、あなたは最初に手がける事業として、次の2つのどちらのビジネスモデルを選ぶでしょうか?

  1. 利益は薄いが一度契約が取れれば、数年〜数十年の期間は安定して収益が上がるビジネス
  2. たまに大きな利益が出ることもあるが、常に新規契約を取り続けなければいけないビジネス

いかがでしょう。おそらくあなたが選んだのは1ではないでしょうか?

それもそのはずです。ずっと新規営業を続けるのは精神的にも大変だからです。

もし2を選んだ人がいるとすれば、「1発ホームランを狙うギャンブル好きタイプ」か「よっぽど営業力に自信がある」のどちらかではないでしょうか。

さて、この1と2が税理士の世界で何に当たるかと言いますと、

1・・・企業の税務相談や申告
2・・・相続税の相談や申告

ということになります。

まず、1の「企業の税務相談や申告」ですが、これはその会社が存続し続ける限り、ずっと必要になるものです。

つまり、税理士側から見れば、「毎月、そして毎年ずっとお金を払ってもらえる、安定的な仕事」ということになります。それに1年も経てば顧客との人間関係もでき、業務も効率化していくことができるため、より効率的に売上を上げられるようになるというわけです。

さらに税理士は一度決めたら「よっぽどの事がない限り変えられることがない」という特徴もあります。税金の計算や申告は誰にやってもらっても同じなので、そもそも「変える理由」が少ないんですね。

ところが相続税の相談や申告は、それとは「真逆」です。

相続税の申告が必要になるのは「一定額以上の資産を持った人が亡くなったときだけ」ですし、一度契約したからと言って毎月お金をもらえる訳ではありません。

また、ご主人が亡くなった時に申告手続きをしたからと言って、奥さんが亡くなった時にも依頼してもらえるとは限らないのです。

報酬も「遺産総額の0.5%〜1%」が相場なので、案件によって売上がバラバラになります。多額の遺産を持っている人ばかり担当できれば良いですが、現実はそう甘くはありません。

つまり、会計事務所としての売上を上げ続けるためには、常に新規契約を取り続けていかなければいけないということになります。

相続税だけで会社をやり繰りしていくのは意外と大変なんですね。

さらに企業がお客さんであれば分からないことは社長や担当者に直接聞くことができますが、相続税の場合は資産を所有していた本人がすでに亡くなってしまっているため、聞きたいことがあっても確認する術がありません。また、遺族は資産を詳しく把握していないケースがほとんどなので、遺産を把握して整理するだけでもひと苦労なのです。

さらに、税理士が相続税について詳しい人が少ない「そもそも」の理由もあります。

実は税理士試験において相続税法は選択科目のひとつなので、相続税についての勉強をしていない人もたくさんいるのです。相続税の申告手続きをするためには、相続税についての勉強をイチからしなくてはいけません。

それらを総合して考えると、相続税は税理士からすると「ハイリスク」かつ「ハイコスト」なビジネスモデルになるため、なかなか力を入れにくいという背景があります。

「相続税できればやりたくない」と考える会計事務所が多いのには、こんな事情があるんですね。

もちろん会計事務所の中には「事業のメインは企業の会計業務だけど、相続税の部署もある」という事務所はたくさんありますし、そのパターンが圧倒的に多いです。

しかしそれも、企業の会計業務という「安定的なビジネス」があってこそできることなのです。

理由2. そもそも市場規模がケタ違い

先ほどの【理由1】で、こう思われた方もいらっしゃるかもしれません。

「新規契約を取り続けないといけないとしても、市場が大きければそれでも十分やっていけるじゃないか」と。

ところが実際はそうでもありません。

相続税は市場規模においても、企業の会計業務とは大きな差があるのです。

その差がどれほどのものなのか、データで見てみましょう。

平成27年度の法人税申告件数は282万5千件でした。それに対して平成27年の相続税の課税対象者(その年に亡くなり、かつ相続税の基礎控除額以上の財産を保有していた人)は10万3千人です。

数字だけだと分かりにくいと思いますので、これを図で比較をすると、その差がいかに大きいのかが分かります。

しかも平成27年は相続税が改正された年なので、これでも相続税の市場は約2倍に増えたのです。逆に言えば、2倍に増えてやっとこの規模感という方が正しいかもしれません。

税制改正される前年の平成26年の相続税の課税対象者数は5万6239人でしたので、さらに圧倒的な差があったことになります。

また、ここでは「法人税」だけの数字で比較していますが、これ以外にも個人で確定申告をしている人もたくさんいます。

平成27年分の確定申告を提出した人の人数を見てみると、2151万5千人です。
※出典:国税庁 | 平成27年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等についてより

この中の何件が税理士によって記帳代行や申告をされたのかまでは分かりませんが、会計はそれだけ大きな市場だということがお分かりいただけるかと思います。

さて、ここでも質問です。

もしあなたが会計事務所の代表だったら、どちらの市場を選ぶでしょうか?

もちろん「みんなの逆をついて自分だけ相続税を取りに行く」という考え方もあるでしょう。

しかし、先ほど説明した通り、相続税の世界は「ハイリスクかつ「ハイコスト」だということを忘れてはいけません。

それらを加味して考えると、積極的に相続税に取り組むという選択は難しいんですね。

もちろん税理士さんの中には「自分の税理士としての知識や経験を、家族を亡くして悲しんでいる人たちの役に立てられたら……」と考えておられる方もたくさんいます。

とは言え、税理士さん達も生活していかなくてはいけませんし、ボランティアで相続税の申告をしようと思うとあまりにもハードルが高すぎる、というわけです。

理由3. 相続税の申告経験のある税理士が少ない(増えない)

先ほど市場規模の話をしましたが、例え市場規模が小さくても、プレーヤーが少なければビジネスとして成り立ちますよね。

ところが実際はそんなこともないのです。

先ほど平成27年度に相続税の課税対象者だった人は10万3千人だったと説明しました。

では、全国に税理士さんは何人くらいいるのでしょうか?

正解は約7万7千人です。
201712月時点。日本税理士会連合会の「税理士登録者数」より

つまり、相続税の申告業務は税理士1人あたり約1.3しかないのです。
もちろん税理士全員が相続税の申告をする訳ではないので、あくまでも市場規模に対する割合の話です。

これが相続税が改正される前の平成26年で見ると、なんと税理士1人あたり約0.7と、1を割ってしまうほどだっということになります。

逆に法人税はというと、税理士1人あたり約37もあります。

税理士さん1人で37社も担当することはできないので、税理士資格を持っていない税理士補助のスタッフに実務を任せながら対応していくことになるのですが、そのおかげでスタッフも実務を通して仕事を覚えていくことができます。

税理士に限らず、どの業界でも仕事を覚えるために必要なのは「知識」「経験」ですよね。

ところが相続税は、担当できる件数がそもそも少ないため、ビジネスとして成り立ちにくいだけでなく、「後輩を育てる」ということも難しいのです。

実際、相続税の申告にも対応している大きな会計事務所でも、相続税を担当している税理士は1人だけということも珍しくありません。

2015年の相続税の改正以降、やっと相続税にも力を入れはじめる会計事務所が増えて来ていますが、それでも「相続税のプロが少ない状況」であることには間違いありません。

まとめ

さて、今回は「相続税に詳しい・強い税理士が意外と少ない理由」について3つの視点から解説しました。

「税理士の視点」から相続税を見てみることで、理由がよく理解できたのではないでしょうか?

少なくとも「税理士さんに任せておけば安心なんだろう」という考えは無くなったのではないかと思います。

また、この事実が分かれば、

  • どうやって相続税の税理士を選べば良いのか?
  • 今自分が何をすべきなのか?

が見えてきます。

次回は、「自分でしっかり見極めよう! 相続税申告における税理士の4つのタイプ」を学んでいきましょう。

ネガ男くん
なるほど!

税理士だからって相続税について勉強したり、仕事をしてきてるわけじゃないんですね!

確かにもし僕が税理士で独立したとしても相続税は選ばないかも。

上手く契約が取れなければ売上がゼロの月も普通にあるって思ったらちょっと怖いもんなぁ……。

ネガティブ思考の僕なら「事務所が潰れちゃうかも」っていう不安に耐えられなさそう(泣)

ポジ仙人
そうなんじゃ。

税理士さんも気持ちでは「相続税に力を入れたい」と思っていても、経営面から考えるとなかなか大変なことなんじゃよ。

まず大切なのは、「税理士なら誰でも相続税も分かっているだろう」という思い込みを無くすことじゃな。

それが自分に合った税理士選びの第一歩になるんじゃよ。

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