

最初は「法律の話で難しそうだな〜」と思ったんですが、ひとつずつ見ていったおかげでカンタンに理解することができました。
そして今度は取り分の話でしたよね?
法定相続分……でしたっけ?
法律の話も苦手ですが、数字の話も苦手なので、ちょっと不安ですね〜。

前回あんなにすんなり理解できたんじゃから、今回も大丈夫じゃよ。
法定相続人が誰になるのか、ちゃんと理解できていれば法定相続分もカンタンに分かるんじゃ。
それよりも法定相続分について理解するということは、相続争いに発展する原因のひとつを理解することにも繋がるんじゃ。
仲の良い家族が仲違いしてしまうようなことを避けるためにも、ぜひその辺りも一緒に抑えておいて欲しいの〜。
前回の「親が亡くなったら誰が相続人になるの? 法定相続人の優先順位とは」で法定相続人が分かったら、次は各自の遺産の取り分である法定相続分を把握していきましょう。
今回も以下のような家族構成図を用いながら解説していきたいと思います。

法定相続人が誰なのか? を改めておさらい
まず、法定相続人の順位については以下のように理解すると分かりやすくなります。

法定相続人は「配偶者(妻や夫)」と「1位〜3位で順位が一番上の人(人たち)」となります。
- 配偶者(妻や夫)がいる場合は、無条件で法定相続人となる
- 第1順位である子供がいる場合は、子どもも法定相続人となる(配偶者+子ども)
- 子どもがいない場合は、第2順位である親(親がいない場合は祖父母)が法定相続人となる(配偶者+親または祖父母)
- 子どもも親もいない場合は、第3順位である親の兄弟姉妹が法定相続人となる(配偶者+兄弟姉妹)

さらに、配偶者がいないケースを加えると、以下のようになります。

そして、法定相続分はそれぞれのパターンごとに少しずつ変わってきますので、次はその辺りを解説していきましょう。

この調子で法定相続分もカンタンに理解できたら良いんだけどな〜。
パターン別に見る法定相続分は?
さて、法定相続人のパターンが分かったところで、それぞれの法定相続分を見ていきましょう。
法定相続分は以下の通りとなります。

第1順位の「配偶者と子ども」だとこうなる
例えば1億2千万円の遺産があったとしましょう。
第1順位の場合は、配偶者が2分の1、子どもが2分の1という法定相続分になります。
なので、配偶者が6000万円、子どもが6000万円ということですね。

もし子供が2人(例えば長男と長女が)いる場合は、この6000万円をさらに2分の1ずつ(つまり4分の1)の3000万円にします。

よく、「長男が全部相続するんじゃないんですか?」と思われている方もいらっしゃいますが、実際はそんなことはありません。
また、「私は嫁に出て苗字も変わったから相続できる権利はないんだろうな」と思われる方もいらっしゃいますが、そんなことはないのです。
長男であっても次男であっても、また嫁に出ていたとしても血の繋がった子供であることに変わりはないため、法律上では全員均等に法定相続分があるのです。
第2順位の「配偶者と親(または祖父母)」だとこうなる
これも1億2千万円の遺産があった場合で考えてみましょう。
配偶者が3分の2なので8000万円、親(または祖父母)が4000万円ということになります。

もちろんこれも、父母ともにいるのであれば、4000万円を2分の1ずつ(つまり4分の1)の2000万円にします。
第3順位の「配偶者と兄弟姉妹」だとこうなる
これも1億2千万円の遺産があった場合で考えてみます。
配偶者が4分の3なので9000万円、兄弟姉妹が3000万円ということになります。

これも、兄弟姉妹が2人であれば1500万円ずつ、3人であれば1000万円ずつということになります。
以上が第1順位〜第3順位までの法定相続分のパターンになります。
また、もしも亡くなられた方に子どもや親、兄弟姉妹が1人もおらず、孫や甥っ子、姪っ子もいない場合は、配偶者がすべての遺産を相続することになります。

遺産総額と法定相続人さえ分かれば、あとは法定相続分に当てはめて計算すれば良いんですね!
順を追って理解していけば、そんなに難しくないんですね〜。
「相続」が「争続(争族)」になってしまう理由と対策
さて、こうやって実際の金額にしてみると、「なぜ相続争いが起こるのか」の一端が見えてくる気がしませんか?
テレビドラマの影響のせいか、「相続争い」と聞くと、
- お金持ちの家庭だけの話
- 愛人や隠し子がいなければ大きな問題にはなることはない
- 強欲な兄弟がいなければ大丈夫
といったイメージをお持ちの方も多いと思います。
しかし、実は相続争いというのは、どのご家庭でも起こり得る、とっても身近な問題なのです。
そのため「相続」は、「争続」や「争族」と言われることもあるほどです。
例えば子どもがいない夫婦がいて、ある日突然旦那さんが亡くなってしまったとしましょう。
最愛のパートナーの突然の死にショックを受ける奥さま。
2人で築きあげてきた1億2千万円の資産はすべて旦那さん名義でした。
法定相続分に照らし合わせて考えれば、その内の3000万円〜4000万円を相手の親や兄弟姉妹に渡さなければいけないかもしれないということになりますね。
しかも遺産が現金や預金ばかりであればまだ良いですが、「遺産のうち1億円は不動産」という場合は大変です。
なぜなら不足分の1000万円〜2000万円を何とか工面して、現金で渡さなければいけないこともあり得るからです。
家族に現金を払うために家を売るなんて、とても受け入れられないでしょう。
それでも「親も老後のお金が必要だろうから、あの人の最後の親孝行だと思って」と思えば納得もできるかもしれませんが、その4000万円分の遺産を相続して間もなく親御さんが亡くなってしまったらどうでしょうか?
その遺産は親御さんの相続遺産となり、パートナーの兄弟姉妹に渡って行くことになるのです。
さらに、親御さんとあなたは血縁関係がないので、遺産を相続することもできません。
お子さまがいらっしゃれば代襲相続もできますが、このパターンではそもそも子どもがいらっしゃいませんから、それもできないのです。
そこまで考えたときに、本当に心から納得することができるでしょうか?
「それが自分の運命」
そう思える方もいらっしゃるかもしれませんが、大切な人の死という悲しみを背負いながらも、生活し続けていかなければいけないという現実もあります。
「ウチはそんな大きな遺産はないから大丈夫でしょ」
と思われるかもしれませんが、逆にこうも考えられませんか?
10億円の遺産があって6億円を自分が相続できるなら「4億円はあの人の家族のために」と、心に余裕も生まれるかもしれませんが、それが1000万円のうちの400万円だったらどうでしょうか?
生活に大きな影響を与える金額になってきますよね。
「え? 400万円ももらえるの?」
家族と言えども、中にはそんな考えを持つ人がいても何ら不思議ではありません。
実は、少し見方を変えれば相続財産とは「不労所得を得られるチャンス」でもあるのです。
急にボーナスが減ってしまった、子どもが進学することになって予想以上に学費がかかりそう、住んでいる家が手狭になってきて家を購入しようか検討している……などなど。
法定相続人である家族の状況は、刻一刻と変わっています。
そんな時に不労所得を手に入れることができると分かったら……?
「権利があるなら主張したくなる」という気持ちも、何となく理解できるのではないでしょうか。
また、「自分たちは兄弟姉妹の仲が良いからモメることはない」と思っている人も注意が必要です。
例えそれまで仲が良かったとしても、突然仲違いになってしまう可能性を秘めているのが遺産相続なのです。
パートナーはもちろん、親、兄弟姉妹は全員があなたにとって大切な家族だと思います。
だからこそ、大切な家族のために「相続」が「争続(争族)」にならないよう、生前にしっかり準備をしておきたいところです。
なぜなら、これらのことは事前にちゃんと準備をしておけば、例えトラブルに発展したとしても最小限に抑えることに繋がるからです。

僕が親や弟とモメるなんて、想像しただけでもイヤだなぁ……。
でも逆に言えば、そうならないように今から準備できるってことですもんね!
さて、どんな準備をしたら良いんだろう?
法定相続分の通りに遺産を分ける必要はありません
では、事前の準備とは具体的に何をしておけば良いのでしょうか?
大切なのは、「当事者と話し合っておくこと」と「遺言書を残しておくこと」の2点です。
ちなみにこの2つは、「どちらかが大切」なのではなく「どちらも大切」になってきます。
そもそも法定相続分というのは、あくまでも法律上で定められている「目安」であり、その通りに分けなければいけないというものではありません。
相続争いでモメたときや裁判になったときのひとつの基準として設けられているわけですね。
だからこそ遺言書でしっかりと明記しておくことが大切なのですが、遺言書だけを残していても十分ではない可能性もあるのです。
なぜなら、家族に内緒で遺言書を残しておいたとしても、相続人である家族がその内容に納得できるかどうかはまた別の話だからです。
「俺が今までさんざん親の面倒を見てきたのに、弟があんなに遺産をもらうだって?」
「離れて暮らしているんだから不動産なんていらなよ。それならもっと現金が欲しかった」
などなど、自分なりの予想と現実の違いに不満を持つ人も出てくるかもしれません。
遺言書通りに遺産を分けることと、家族が仲違いしないで済むかどうかは別の話なのです。
また、いくら話し合いをしていたとしても、遺言書がなければ、これもまたモメる原因になる可能性があります。
先ほども書いた通り、家族全員の生活環境や家計事情は常に変わっているからです。
話し合いをしていた時とあなたが亡くなった後の状況がまったく同じという方が珍しいでしょう。
だからこそ、自分の意思を固め、それを当事者である家族に伝え、意見を交わし、それを踏まえて遺言書を書く。
そこまでの手順を踏んでおけば、例え内容に不満を持つ人がいたとしても、大きなトラブルへの発展を防ぐことに繋がります。
正直なことを言えば、全員が100%納得できる答えを出すのは不可能に近いと言わざるを得ません。
だからこそ、早い内に家族全員でベストの形を考え続けていくことが、結果的に家族全員の幸せに繋がっていくんですね。

「遺言書を書くのが大事」って話はよく聞くんですが、それだけでは不十分な場合もあるんですね。
そう言われたら家族会議なんていつ以来してないかなぁ……。
今度実家に帰ったときに、お父さんにそれとなく話してみようかな!
まとめ
今回は法律で定められた相続財産の取り分である「法定相続分」についての解説でした。
もしかすると、何となく持っていたイメージよりも、自分の法定相続分が少なく感じた方もいらっしゃるかもしれません。
そういう「あれ?」という疑問や不満を法定相続人である家族の誰かが感じはじめた時に、本来起こる必要のなかった争いに発展する可能性が出てきてしまいます。
「自分亡き後、家族には仲良くあって欲しい」「親が亡くなっても、今のまま仲の良い家族でいたい」と、誰もが思われることと思います。
その尊い通りの関係を続けていけるよう、早めの準備をしていきたいですね。

それよりも、後半の「当事者で話し合うことの重要性」が個人的にはすごく重要だなと感じました。
相続争いってドラマの世界だけだと思っていましたが、他人事なんかじゃないんですね。
僕も親や兄弟と仲良くいられるよう、少しずつ家族と将来のことを話し合ってみたいと思います!

ネガ男くんが言うとおり、法定相続分を理解することよりも、それによる影響を理解しておくことの方がよっぽど大切なんじゃ。
相続争いに限らず、揉め事というのはほとんどが本人たちも起こしたくて起こしている訳じゃないからの〜。
お互いがボンヤリと想像していた理想と、目の前の現実にギャップがあったから起こる場合が圧倒的に多いんじゃよ。
それを防ぐためには「話し合い」が、お金もかからなくて一番有効な対策になるという訳じゃな。
「自分が死んだ後のことは家族が何とかしてくれるから大丈夫」という考え方は、一見すると家族を信頼していてポジティブのように感じるが、実際は「責任の丸投げ」になってしまう場合もあるんじゃ。
ぜひみなさんも、いずれ必ず来るその日のために、家族みんなで話し合う機会を作ってみてはいかがの〜?