
Iさんには30代の一人娘さんがいらっしゃるそうです。
一昨年、その娘さんがめでたくご結婚されたそうです。
結婚後すぐに同時に子どもも授かり、生まれたのは可愛い可愛い女の子。
初孫ということもあり、Iさんは可愛くてしょうがないのだそうです。
「孫ってこんなに可愛いものなのか……」
そんな想いに浸っているときに、ふと考えたことありました。
それは、
「自分が持っているこの広大な土地を、将来的には孫(女の子)に継がせることになるんだろうか……?」
ということです。
Iさんの家系は代々農家だったため、畑や田んぼがたくさんあります。
いわゆる地主さんですね。
ところが時代はすっかり変わって「土地神話」という言葉も昔の話。
Iさんのご両親が亡くなってご実家や土地を相続した時は「家はこのまま住めるし、定年退職後に農業ができるなんて楽しみだ」としか考えてなかったそうです。
定年退職後は、大変ながらも奥さまと一緒に畑を耕したり草刈りをしたりしながら自分たちが食べたい野菜やお米を育てながら楽しんでいるというIさん。
ところが娘さんたちは境遇が違います。
娘さん夫婦は近くに住んでくれていて、よく顔は出してくれるものの、農業をする気はありません。
それでも自分たちが亡くなったときは、必然的にその娘さんが相続人になってきます。
では、その娘さんが亡くなったときは?
娘の旦那さんが生きていれば配偶者が一旦すべて相続することもできるものの、その旦那さんが亡くなったら可愛い孫に……。
そもそも娘の旦那さんも一人息子。
旦那さんのご両親もIさんと同じく農家の家系なので土地持ちなんだそうです。
「いらない土地は、早めに売ってしまいたい」と思っても、こんな田舎の土地を買ってくれそうな人がそもそもいません。
一部の土地は宅地にもできないため、売りたくても売れないというのが悲しい現実だそうです。
それでもその土地はご先祖様が大切に守ってきてくれた土地。
何とか残したい。でも、無理に残せば娘や孫の負担になる。
娘や孫にできるだけ資産を残してあげたいけど、相続放棄させることになってしまってはその意味もない……。
この答えのない葛藤が、Iさんの悩みの種となっているそうです。
しかし、最後にIさんはこんな言葉を残してくださいました。
父や先祖が残してくれた家や土地はたしかに大切です。
ですが、一番大切なのはこれから未来を生きて抜いていく娘夫婦や孫たちの人生です。
もしも娘や孫が相続してやっていけたとしても、いずれ誰かがこの問題に対処しなければいけない日がやってきます。
だからこそ私は、生前にできる限りのことをしようと思っています。
不要な土地をできるだけ減らしたり、借金を残さずに預金をできるだけ残したり、不要になった農具や家の中の物を片付けたり。
また、娘夫婦ともこれらのことについて話す機会を作りはじめました。
ありがたいことに今のところ2人は「ご先祖様が残してくれた物を何とか守りたい」と言ってくれています。
しかし、その気持だけではどうにもできない部分も多々あるのも事実です。
だからこそ私たちが生前にできるだけスッキリした状態にしてあげたいな、と思っています。
ポジ仙人とネガ男くんのまとめ

たしかに田舎だとこういうことがあり得るんですね。
でも、規模は違えど僕も似たような悩みはありますよ。
僕の実家は土地持ちではないですけど、地元を出て離れて暮らしているので「いずれは実家をどうすべきなんだろう?」と考えたりするんです。
でもいつもどうしたら良いのか分からなくなって考えることを諦めちゃうんですよね……。

だがな、ネガ男くん。
実は人生というのは「答えのない問いばかり」なんじゃ。
その問いに対して一人ひとりが「自分なりの答え」を出さなくてはいけない。
そしてもっとも大切なのは、その答えの内容ではなく、答えを出すときの心のあり方なんじゃよ。
「しょうがないからこうしよう」という“割り切りの心”で決めるのか、それとも「こうすべきだ!」という“腹をくくった心”で決めるのか。
その心ひとつで、その先の人生が大きく変わってくるんじゃ。
ワシにはIさんが、腹をくくったように見えたがの。
みなさんも目の前にある答えのない問いに対して、目を背けずに向き合う時間を作るのが大切じゃよ。
田舎では同じような悩みを抱えている人が多いのではないかの〜。